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Little me

本、映画、ドラマ。感じたことをそのままに。

旅で自分は探せるか -"Wild"/「わたしに会うまでの1600キロ」

原題の通り、一人孤独にアメリカの自然に向かって歩き続ける話。

わたしに会うまでの1600キロ [Blu-ray]

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スタートしてすぐに、「バカなことをした」と後悔するシェリル。
今日から一人で砂漠と山道を歩くのだが、詰め込みすぎた巨大なバックパックにふらつき、テントを張るのに何度も失敗し、コンロの燃料を間違ったせいで冷たい粥しか食べられない。この旅を思い立った時、シェリルは最低の日々を送っていた。どんなに辛い境遇でもいつも人生を楽しんでいた母の死に耐えられず、優しい夫を裏切っては薬と男に溺れていた。遂に結婚生活も破綻し、このままでは残りの人生も台無しだ。母が誇りに思ってくれた自分を取り戻すために、一から出直すと決めたのだ。
だが、この道は人生よりも厳しかった。極寒の雪山、酷暑の砂漠に行く手を阻まれ、食べ物も底をつくなど、命の危険にさらされながら、自分と向き合うシェリル。果たして彼女が、1600キロの道のりで見つけたものとは──? (Amazon商品紹介より)

旅ものは大好きだ。移りゆく景色を見ると自分も旅をしているような気分になれる。

この主人公のように、何かを変えるきっかけに旅を選ぶこと人は多い。私の周りでは、突然しがらみを捨てて未知の世界に飛び込もうとするのは女性である確率が高い。それは“自分探し”と、自ら称したり周りから揶揄されたりする。旅をすることで自分を探すことなんてできるんだろうか。

 

過去の経験から思い起こすと、旅の途中で、自分が変わりつつあるな、とか、真の自分が見えてきたな、とか、そんなに分かりやすく感じられたことはあまりない。目の前にどんなに美しい、広大な、知らない世界が広がっていたとしても、頭の中にあるのはとんでもなく生活じみた下らないことだったりする。ここまで来て考えることじゃないよなあ、とつぶやいたり。

ただ、ふとした瞬間に、普段は思い出しもしない過去のことがよみがえってくることがあるのだ。あ、この光の感じ、昔よく行ったおじいちゃん家でうたた寝していた時に似ている。あの子の振る舞い、親に口応えしていた中学生の時の私に似ている。この風の匂い、家族皆で住んでいた頃の夕食どきと似ている。などなど。それが自分の強烈な感情(寂しい、悔しい、嬉しい、心地よい、など)に結びついていることが多く、ざわざわと気持ちが揺さぶられる。こういう出来事にふんわりと包まれることが、旅=非日常のなせる業ではと思っている。

そして、帰ったあとにじわじわと効いてくる効用もある。今度は逆に、日常生活の中で旅の途中の感覚や感情を思い出す瞬間があるのだ。これをあの場で食べたときはすごく美味しかったなあ。人に優しくしてもらったとき、もっと素直に喜んでいたなあ、と。こうしてふっと日常から離れ、次にとる行動を変えられるような記憶を持って帰ることも、旅の醍醐味だ。

なので自分探しに旅に行くという人がいたら、「できるかな」と言ってしまうと思うが、それでも「普段はない感情に出会えるから、ぜひ行った方がいいよ」と背中を押してあげようと思う。